エストニアでの起業・ビジネスを検討されている皆様に向けたHow-Toガイドも第4弾。この記事では、実際に設立したあなたの会社をどうやって運営していくかのご紹介いたします。
会社の運営にあたって必要な項目のうち、皆さんがご興味を持っていると思われる資本金や税金、会計制度、配当など、一緒に見ていきましょう。
ローカルサービスと提携する
現在、エストニアを拠点とする多数の会社が、エストニアの電子政府基盤である「X-Road」を活用し、電子政府と密接に結びついた各種業務支援サービスを提供しています。これをローカルサービスと呼び、エストニア政府の公式サイトでは下記のような企業を紹介しています。
税務、法務、口座管理や支払い処理の支援サービスなどがありますね。これらの業務をすべて自前で行うのはとても難しいため、事業内容に合わせてこれらのローカルサービスとの提携を検討してみて下さい。
なお現在SetGoでは、国際税務に詳しい日本の税理士・会計士と連携したサービスをご提供中です。月々の会計のサポートサービス(英語のみ・月額€35〜)や、税務相談(日本語可・5000円~/1時間)などのサービスがご提供可能ですので、サービスの利用をご希望の場合はその旨をカスタマーサポートまでお知らせください。
資本金を払込む
エストニア法人設立に必要な最低資本金は2,500ユーロです。この資本金の払込みは最初の配当の支払いまでに行えばよく、最長10年間の待機期間があります。ただし、資本金が25,000€以上の場合は設立時の資本金払込みが必要になりますのでご注意ください。
払込みは以下の方法で実施することができます。
- 口座を開設した銀行に、日本の銀行から資本金を送金する
- e-Businessのページにログイン後の画面から資本金を入金したことを報告
また、銀行での払込み時に「Share capital payment」(資本金の払込み)であることを明記する必要があります。資本金の払込み証明をエストニア政府に提出する場合がありますので、払込み証明書の発行を銀行に依頼することも忘れないようにご注意ください。
税金を支払う
下表は、エストニア法人に関連する税区分、納税国、税率について概要をまとめたものです。
税区分 | 納税国 | 税率 | 備考 |
法人税 | エストニア | 0%/20% |
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社会税 (社会保険料) |
33% |
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VAT (付加価値税) |
20% |
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固定資産税 | 変動 |
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贈与税 | なし | 0% |
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エストニア法人に関連する税の一覧
エストニア法人を設立された方の多くは、エストニアの税制に魅力を感じ、エストニアでの納税を検討していらっしゃると思われます。特に法人税は特筆すべきものがあります。
エストニアの法人税は一律20%の上、日本と違って利益には課税されません。利益を配当として支払う際にのみ、20%の法人税が課せられる形になります。つまり内部留保をしている限り課税されないというわけです。これは特に創業期の企業にとっては大きなアドバンテージですよね。
しかし、納税先の国はビジネスの形態によって変わってきます。
例えば、ビジネスがオンラインで行われ、世界中から売上がある場合には、その売上はエストニアにおいて課税対象と理解することができるでしょう。一方で、飲食業や小売業など、ビジネスの主体が日本にある場合は、その売上が日本において課税対象となると考えられます。
納税国をどこにするか、税区分はどうなるか、という問題は業態によりますし、判断が難しいため、少しでも不安な点があれば税理士の先生に相談することをおすすめいたします。
なお、日本とエストニアは租税条約締結されており、二重課税が発生することはありません。この条約は特定の条件に該当する配当・利子などの減免も定義しています。詳細は財務省「エストニアとの租税条約のポイント」や国税庁「源泉所得税の改正のあらまし」にてご確認ください。
対象 | 日本の既存税率 | 条約適用税率 | 免税(課税されない)対象 |
配当 | 20% | 10% | 配当を支払う法人の議決権 10%以上を、6か月以上保有している法人への配当 |
利子 | 15%(公社債等)
20%(貸付金) |
10% | 政府、公共団体、銀行、または政府から指定された機関への利子 |
使用料 | 20% | 5% | なし |
租税条約で規定された免税内容一覧
エストニアにおける税金の支払先は、Estonian Tax and Customs Board です。エストニアでは何かを購入する際、基本的にVAT(付加価値税)の支払いが必要になります。日本で言うところの消費税にあたるものです。エストニア法人の年間の売上高が40,000€を超える場合には、別途VATナンバーを発行することで、個々の支払い時のVATが免除され、年末にまとめて受け取り分と支払い分の差額を支払うことができます。
SetGoでは税理士のご紹介や、VATの申請代行も行っていますので、お気軽にお問い合わせください。
配当・給与を支払う
エストニアにおける所得にまつわる税の仕組みはとてもユニークです。給与と配当、そして所得税と社会税について補足をしておきます。
取締役の給与(役員報酬)について
エストニア法人の取締役の給与は、実際の職務がエストニアで行われたのか、それ以外の国で行われたのかに関係なく、エストニアでの個人所得税(20%)の対象となります。
従業員の給与について
エストニア法人の従業員の給与は、該当従業員がすべての仕事を日本で行った場合(および非居住者として扱われる場合)、エストニアにおける課税はありません。代わりに、日本の税率で日本国に税金を払うことになります。
エストニアは社会税が充実しているため、会社側・従業員の税負担は小さくありません。
例えば平均給与の1,400ユーロを額面として支払う場合、会社側の持ち出しは1873.20ユーロ、従業員の手取り(エストニア在住)は1157.46ユーロとなります。
税金の計算はこちらのサイトが便利です!
経費について
エストニア法人では、日本法人と同じように以下のような支払いを経費として計上することができます。(一例)
- 各種の手数料
- サポートサービスの利用
- マーケティング費用
- ハードウェアとソフトウェア代金
- 通信費
- 出張費(交通費と宿泊費のみ可)
- 事業関連イベントへの参加
- 接待費 ※課税対象/厳しい制約あり
- 給与
- 関連税(社会税、法人税など)
出張については、社内規定を作ることで、出張費とは別の出張手当を1日50ユーロまで支給することも可能です。
一方で日本とは違い、接待費に関しては厳しい制約があり、どのような目的で/誰と/どこで飲食をしたのかをレポートする必要があります。
報酬額の決め方について
一般的な規則として、各役員に対して、役員報酬と従業員給与の両方を支払う場合にはそれぞれ 30%/70% の比率で支払いを行うことになっています。例えば、役員である自分自身の月額報酬が合計で1,000€に設定したい場合、役員報酬を300€、従業員給与を700€として支払うということになります。
なお、これらの税率は変化する可能性がある他、特定の条件において減免が適応される場合があるため、税理士やローカルサービスをご利用になることをおすすめいたします。
決算をする
最後に、決算処理について簡単に記載いたします。これは全ての創業者に課されている義務です。
決算処理は、1年に1度実施します。設立時に指定した会計年度(SetGoユーザーの場合は1月1日〜12月31日)の締め日より半年以内に決算処理を済ませ年次報告を行う必要があります。この提出がされていないと、法律で罰金が課せられる上、データベース上に公告されるので、注意が必要です。
年次報告は、Annual accounts(年次会計報告書) と Management report(経営者報告書) から構成され、エストニア政府の公式ページから報告を行います。なお、VAT申告をしている場合には月間報告が別途必要です。
これらの会計処理に不安を覚える方は、SetGoカスタマーサポートまでお問い合わせください。有料(月€75〜)で年次報告書の作成を代行致します。
正しく理解してエストニア法人を運営しよう
さて、これまでe-Residencyの申請から会社の運営までの一連の流れをこのHow To Guideで解説してきました。
e-Residencyという画期的なプログラムにより、エストニアでは日本よりはるかに簡単に法人登記ができるようになりました。ただ依然として、海外でビジネスを行うには、税金や給与の支払いなど、制度面で検討しなければならないことが多くあるでしょう。
エストニア政府としても、これから外国人にとってよりわかりやすく、簡単なシステムを構築していこうという前向きな姿勢を示している為、今後の展開に期待できます。
SetGoでは日本企業のエストニア進出・事業運営を支援しています。お困りのことがございましたら、お気軽にお問い合わせください!
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