e-Residency

e-Residency×ホリエモン対談レポート エストニアの成功から日本が学べる教訓とは?

2018年3月16日、エストニアの首都・タリンにてホリエモン祭が開催され、e-Residencyのチーフ・エヴァンジェリストであるアダム・ラング氏と、日本の実業家、ホリエモンこと堀江貴文氏の対談が実現しました。

小国エストニアの存在を世界に知らしめたe-Residecyプログラムの実態を知り尽くすラング氏と、実業家、投資家、時にはタレントとして幅広い分野で活躍する堀江氏。この二人のトークセッションからどのような化学反応が生まれるのでしょうか。

電子政府化に向けて 日本が抱える課題とは

2014年にローンチされたe-Residencyは、外国人に向けてエストニア政府の電子プラットフォームを解放する電子国民プログラムいまや、その登録者は既に50,000人を超えています。

世界各国から注目を浴びるe-Residencyですが、その実態を理解するには技術だけでなく、政治的側面からエストニアを捉えて考える必要がある、と対談の冒頭で語ったのはe-Residencyチーフエバンジェリストのラング氏

e-Residencyは新しい技術というわけではなく、行政のデジタル化政策の一環で国内に構築されたプラットフォームを世界の人々に解放したものであるため、行政・文化基盤が異なる他国がそれをそっくり真似て上手く機能するというものではないと強調します。

これに対して堀江氏エストニアはデジタル化のタイミングが良かったのかもしれない」と指摘します。

「日本の場合、かなり前から税金や年金といった様々な情報がデジタル化されている一方、それぞれ異なる機関で管理されているため、全ての個人情報が統合されたIDを作るのがシステム的に難しくなってしまっている。政治的にも、日本でそういった統合IDを作ることは、監視社会の誕生を招いてしまうといった反対意見が後を絶たないと、技術的・政治的側面から現状の課題を指摘しました。

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事実、エストニアは、1991年のソ連崩壊を期にエストニアが迅速な国家の立て直しを迫られたことで、政府のIT技術への積極的な投資を促し、同国の電子国家としての躍進に大きな影響を与えました。それを支えたのがエストニア政府の情報基盤連携システム「X-Road」の存在でしょう。

「データの高速道路」とも称されるX-Roadは、によって官庁や病院、警察などの各機関が保有しているデータベースを相互に接続することを可能とするデータ交換レイヤーで、エストニアはこのX-Roadによって行政・民間共に大幅な業務の効率化を達成したのです。

X-Roadの導入に至った経緯やその他詳細についてはForbes Japanの記事によくまとめられています。

 

エストニアも順風満帆だったわけではない

エストニアにおいてもデジタル化に対する反対意見が多くあり、最も議論を呼んだのは選挙システムへのデジタル技術導入のタイミングだったようです。

「特にセキュリティの脆弱性を懸念する声が多くありましたが、実際に結果をみるとオンライン投票に肯定的だった政党は多くの票の獲得に成功しており、一方でデジタル化に対して懐疑的だった政党はオンライン投票の推進が遅れ、獲得票が伸び悩みました。

もちろんエストニア政府としてはさらなるセキュリティの改善に努める必要がありそうですが、次の選挙ではオンライン投票に懐疑的だった党もその利便性や効率性からオンライン投票の導入を検討せざるをえないでしょう。ラング氏は振り返ります。

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続けてラング氏は自身の出身国、イギリスでの実体験を交えてこう説明します。

「私の生まれ故郷であるイギリスや日本の医療においてはいまだにカルテが紙媒体で管理されていることが多く、電子上でどこがどのように情報を管理しているかについては不透明な部分が多いのが現状です。一方でエストニアでは電子カルテが個人IDと紐づけて管理されており、だれがいつ、どの権限で情報にアクセスしたのかを常に監視できるようにログを取ることでその透明性を担保しています。」

このように、エストニアも行政へのデジタル技術の導入について、反対意見に揉まれながらも着実にその施策を推し進めていることが、対談から明らかになってきました

小国だからこそできるスピーディーな意思決定

リリースからの5年間で、165ヶ国50,000人にまでその登録者を拡大してきたe-Residency。ラング氏が指摘したように、そのスピード感と意思決定力はスタートアップさながらと言えます。

エストニアの総人口は131.6万人(2017年時点)、沖縄県の人口とほぼ同規模。それを踏まえて堀江氏は、

インターネットの時代では大きな国がパワーを持っていたが、パラダイムシフトが起こり、小さい国がパワーを持つようになるかもしれない。e-Residencyの成り立ちを聞いてて、エストニアは意思決定が早く日本じゃありえないスピード感で進んでると感じた」とコメントします。

「世界を最適化する上での一つのお手本になりそう。日本では未だに反ワクチン運動に対抗できず、行政が子宮頸がん予防接種の義務化すらできていないと続け、日本の現状について嘆きました。

ラング氏はこれに対して、

「コミュニティが小さいだけでなく、失敗を恐れない、という国民の姿勢も大きいです。他の多くの国でe-Residencyのような大規模な施策の導入を試みて失敗すれば、それは政治家にとって大きな屈辱となるでしょう。一方で私たちは出来るだけ多く、小さい単位から試行錯誤を繰り返し、その最適解を導き出そうと努力していますと付け加えます。

意思決定が早いだけでなく、果敢かつ地道に前に進もうとするその姿勢がエストニアのここまでの躍進を支えてきたと言えます。

 

日本がエストニアから学べること

日本もマイナンバーという電子情報基盤の導入を進めていますが、未だにその利便性は国民に浸透しておらず、普及が停滞しています。その状況下で我々はエストニアから何を見習うことができるでしょうか。今回の対談の中では、2つのキーワードがあがってきたように思えます。

1つ目に、制度のローカライゼーション(現地化)が挙げられるでしょう。

堀江氏が指摘したとおり、コミュニティの大小やデジタル技術導入の時期など、その要因となり得るエストニアと日本との政治的・文化的相違は多く挙げられるでしょう。我々はこれらを全て鑑みつつ、e-Residencyという成功例を自国にいかにローカライズさせて取り入れていくかを模索していかなければなりません。

また、たゆまぬ挑戦意識を持つことも重要といえます。

リスクが大きすぎるのであればプロジェクトの規模を抑えて少しずつ前進する、といった”スマート”な意思決定をコンスタントに取り続ける姿勢は少なからず我々日本人がエストニアというロールモデルから学ぶことができる一つの教訓ではないでしょうか。

このように、「国のサイズが小さいから」といった理由でエストニアの成功を他人事として捉えるのではなく、いかにエストニアの成功を日本に取り込むか、という視点をハングリーに持ち続けることが不可欠と言えるでしょう。

 

電子国民プログラムのリーディングカントリーへ

世界初の電子国民プログラムとしてリリースされたエストニアのe-Residency。とはいえ、今やアゼルバイジャンが同様のプログラムをリリースし、更にモンゴルにおいても既にデジタルIDが導入されています。

世界各国で電子国民制度周りが活発になっていく中で、エストニアは今後いかに先行者であることをいかして優位性を発揮していくのでしょうか。

その動向から目が離せません!

ABOUT ME
Hibiki Hosoi
Hibiki Hosoi
東北大学経営学部4年。エストニア・タリン工科大学に交換留学中(2019年1月〜)。 専攻は国際経営論。在学中は国際交流支援団体でのイベント運営や留学生サポートを行っていた他、3年次には消費者の新技術受容度について研究。 エストニアでは大学に通いながら、e-holic OÜのインターンとしてメディアへの寄稿やイベント運営に携わっている。 座右の銘は「人間万事塞翁が馬」。サカナクションを愛してやまない。